スペシャルティコーヒーの先駆者が語る
コーヒーの真理
素材を極め続ける「くれあーる」の34年
Jun 05 2025
1992年の創業以来、日本のスペシャルティコーヒー界を牽引してきた「創作珈琲工房くれあーる」様。今回はコーヒー業界のレジェンドとも称される代表・内田様にお話を伺いました。食品会社での「目利き」を原点とする内田様の素材哲学と、その品質を守り抜くため最新パッケージ技術「TiMELESS®」について語っていただきました。
1992年の創業当時、まだスペシャルティコーヒーという言葉すら一般的ではなかった時代に、どのように普及に努めてこられたのでしょうか。
当時は、スターバックスすら日本にない時代です。産地の写真一枚を入手するのにも苦労し、アナログな情報をかき集めるしかありませんでした。私は自店舗の営業と並行して、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)のローストマスターズ委員会の立ち上げやジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(JBC)の運営・審査員を務め、横の繋がりを大切にしながら、日本全体のコーヒー文化の底上げに尽力してきました。
環境は大きく変わりましたね。
ええ。今は農園にWi-Fiがあり、収穫動画がリアルタイムで届く便利な時代です。しかし、情報が溢れる今だからこそ、情報の速さに流されず、目の前のデータが「本当に正しいのか」を検証する力が問われています。かつて産地を歩いて培った「厳しい鑑定眼」の価値は、むしろ現代においてこそ高まっていると感じています。
内田様がコーヒーの世界に身を投じて34年になりますが、きっかけは何だったのでしょうか?
もともとコーヒーが大好きだったこともあり、「食品の目利き」の視点をコーヒーの世界に持ち込みました。コーヒーの世界に入る前、食品会社で調達・品質管理に携わっていました。相場感覚や厳しい品質基準の中で叩き込まれたのは、「原料が悪ければ、その後の工程でどれだけ努力しても、本当に良いものはできない」という本質でした。
最高の原料を手に入れば、提供される一杯はお客様に自然と笑顔をもたらすと信じています。だからこそ、私は自ら納得できる素材だけを求め、今も世界中の産地を厳選し続けているのです。
内田様が考える、理想の「美味しいコーヒー」とはどのようなものでしょうか。
私たちが追求しているのは、単に苦い、酸っぱいではない「素材の甘みが際立つコーヒー」です。そのためには、質の良い「酸」が不可欠です。酸味にも種類がありますが、適切な酸が無いと決してさわやかなコーヒーにはなりません。実は、この酸こそがコーヒーの「甘み」を最大限に引き立てる重要な要素なのです。
良質な豆であれば、冷めていく過程で味が濁ることはありません。むしろ温度が下がるほど、フルーツのような爽やかな酸と、それに支えられた心地よい甘みが鮮明になります。最後の一滴までずっと美味しく、驚きを持って楽しんでいただける。それが、私たちが提供したい本物の素材の味です。
環境配慮型コーヒーパッケージ「TiMELESS®」を採用されました。きっかけは何だったのでしょうか。
きっかけはSCAJの展示会でした。そこで猿田彦珈琲さんがTiMELESS®を使っているのを見て興味を持ったのが始まりです。実際に手に取って感じたのは、まず「圧倒的なスマートさ」です。従来のパッケージには逆止弁(バルブ)が不可欠でしたが、TiMELESS®はバルブが無いので厚みが全く出ません。この薄さは、配送効率や店頭での棚置きの際にも大きなメリットになります。
機能面ではいかがでしょうか。
従来のバルブは製品ごとにガスの抜け具合にばらつきを感じることもありましたが、TiMELESS®は個体ごとの機能のばらつきが無く、非常に安定しています。また、特に素晴らしいのは「焙煎後の保管性の良さ」です。これまでは焙煎後、豆を大きな容器などでまとめて保管するのが一般的でしたが、TiMELESS®を使って一袋ずつパッキングすることで、素材の鮮度をより高い次元で維持できるようになりました。
伝統を背負い、次世代の「美味しさ」へ
最後に、今後の展望をお聞かせください。
現在、業界ではアナエロビック(嫌気性発酵)やインフューズドコーヒーといった新しい手法が登場し、賛否が分かれています。しかし、かつて「スペシャルティコーヒー」が登場した時も、喫茶文化の世代からは「あんなのはコーヒーじゃない」と否定された歴史がありました。
私は伝統を大切にしながらも、新しい技術を一方的に排除せず、何が「次世代の美味しさ」なのかを柔軟に定義していきたい。1ドル360円の時代から命懸けでコーヒー豆のルートを切り拓いた先人たちの情熱を忘れず、最新の科学や技術と融合させていくことが、私の使命だと思っています。
【取材を終えて】
内田様のお言葉からは、「素材を扱うプロ」としての揺るぎない矜持が伝わってきました。
「酸が甘みを引き立てる」という確かな哲学や、TiMELESS®採用といった最新技術への柔軟性は、すべて「最高の素材を損なわずにお客様へ届けたい」という一点に繋がっていると感じます。伝統を背負いながらも、常に本物を追求し、進化を止めない。くれあーる様の扉を開ければ、その長い歴史が裏打ちする「素材の真実」に出会えるはずです。
創作珈琲工房くれあーる 代表 内田様、関係者の皆様、貴重なお話をありがとうございました。
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