研究開発

フェリチン ~球状ナノ蛋白質~

長瀬産業では、独自の遺伝子組換え技術を駆使し、フェリチンを大量に生産する技術を開発しました。

フェリチンとは

フェリチンはあらゆる生き物が生体内に作る球殻状たんぱく質で、生体内の鉄イオン濃度の調節に深くかかわっています。動物のフェリチン(図1)は24個のサブユニットで構成される外径12 nmの大きさで、8 nmの内部空洞に鉄を貯蔵します。近年の研究では、フェリチンが鉄だけでなく様々な金属イオンや有機分子を内包可能であることも明らかとなっています1

NAGASE独自のフェリチン製造技術

フェリチンは、LサブユニットとHサブユニットの2種類で構成されていますが、この構成比率を変えると、内部の空洞に貯蔵できる金属イオンの量を変えることが可能になります。ナガセバイオイノベーションセンターでは、長年培ってきた独自の大腸菌遺伝子組換え技術を駆使し、二種類のサブユニットの構成比率を制御しつつ、フェリチンを大量に生産する技術を開発し、特許を取得しました2

フェリチンを用いた応用研究例

フェリチンの性質を利用した研究は、世界各地で幅広くなされています。たとえば、フェリチンは自己組織化能を持つため、平面上に規則的に配列することができます。鉄を内包したフェリチンを基板上に配列させ、これをマスキング剤として利用したナノ量子ドット3、フェリチンを架橋したナノフィルター4、フェリチンに有効成分を内包させたドラッグデリバリーシステム5の開発なども進められており、電子機器、医療、及び環境等の分野に適用する研究が数多く進められています。

今後、お客様のニーズに早期に応えるために本技術の実用化に向けて積極的に取り組んでまいります。

図1. 動物のフェリチン外観(左)と断面(右)の模式6

引用文献

1. Yamashita I. et al. Ferritin in the field of nanodevices. Biochim Biophys Acta. (2010) 1800(8):846-857

2. フェリチンの製造方法. 特許第5957443号 (2016)

3. Wang XY. et al. Damage-free top-down processes for fabricating two-dimensional arrays of 7 nm GaAs nanodiscs using bio-templates and neutral beam etching. Nanotechnology (2011) 22(36):365301

4. Peng X. et al. Ultrafast permeation of water through protein-based membranes. Nat Nanotechnol. (2009) 4(6): 353-357

5. Truffi M. et al. Ferritin nanocages: A biological platform for drug delivery, imaging and theranostics in cancer. Pharmacol Res. (2016) 107: 57-65

6. US National Library of Medicine, URL:https://medlineplus.gov/images/PX000078_PRESENTATION.jpegより引用(日本語訳は当社による)

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